お知らせ・コラムColumn
心臓の病気への早期治療介入
2021年3月31日
近年アメリカ獣医内科学学会(ACVIM)により慢性心不全の診断・治療のガイドラインが発表されました。
これを基に診断、治療を行っております。(病態ステージをA~D分類)。
まず、シニア世代のわんちゃんは聴診にて心雑音の有無を確認します。
次に身体検査にて心不全の兆候(咳、運動不耐性等)の確認を行います。
心雑音が聴取される場合、わんちゃんでは僧帽弁閉鎖不全症がほとんどです。弁膜症は進行性の病気のため現在無症状のわんちゃんでもいずれ心不全を発症します。
心雑音が聴取され、無症状のわんちゃんは先制医療の概念からすると”未病”の状態です。未病の状態においても病気(発症)に近い未病か、健康状態に近い未病かは外見からは判断できません。
ACVIMの分類ではステージBに相当します。更にステージBは、B1とB2に分類されます。
従って、心雑音のある場合は更にくわしく検査をし心臓の病気の状態の把握に努めます。
一昨年アメリカの論文にてステージB2から治療を始めると発病がおくれ病気の進行が遅くなることが報告されました。
この報告と今までのデータを統合し、ステージB2からの介入治療を始めています。
ステージ分類にはまずレントゲン、心電図、バイオマーカー、エコーを用います。バイオマーカーは、特に力を入れています。バイオマーカーとしてANPとトロポニンIを用いております。
ANPは、左心系の不全の程度を表し、トロポニンIは心筋の障害度を表しています。ANPの値は左心不全のグレードによく相関していて、B2は50以上に相当します。更に95以上の値はステージCに相当し、無治療だと余命が短いとされています。
ANPは、客観性が高く血液検査で判定できるので、心雑音のあるわんちゃんにはこの検査を行いステージ分類をしています。B1に分類される場合は、半年ごとの定期な検査をおこない、投薬はせず観察します。
しかし、ステージB2の場合は、一日一回の心臓の薬と心臓病用のフードをお勧めします。このステージの子は、進行性が早いので三カ月~六か月おきに心臓の評価をします。検査と先制医療において、進行を遅らせ、健康寿命を延ばします。